上司に秘密を握られちゃいました。
断る暇もなく電車が駅のホームに滑り込み、ドアが開いた。
「すみません……」
仕事を手伝ってもらって、夕食をごちそうになって、家まで送ってもらって……なんて幸せな日なのだろう。
「ここから遠いの?」
「いえ、歩いて十分ほどです」
「それじゃあ、お腹いっぱいだから丁度いい運動だ」
優しく微笑んだ彼と肩を並べて歩き始めた。
この時間になると相当冷える。吐く息が白い。
「そういえば、制服、本当に見たい?」
「もちろんです!」
もちろんだ。
この機会を逃したら、写真でしかお目にかかったことのない憧れの制服たちに、一生会えないかもしれない。
「社交辞令なら、無理に押しつけたら悪いと思ったんだけど……」
「社交辞令なんてとんでもない! うれしすぎて、倒れそうです」