上司に秘密を握られちゃいました。
「冷えちゃったね。ごめんね」
真山さんは気遣いのできる人だ。
デパートの社員としては、そうした力は重要だ。
「大丈夫です」
「とっても楽しかったから」という言葉は飲み込んで笑うと、真山さんも優しく微笑んでくれた。
それから五分ほどでマンションに到着した。
「ここなんです。送っていただいて、ありがとうございました」
「いやいや。西里さんとデパート談義ができてとても楽しかったよ。
またアイデアあったら教えて?」
「はい、是非」
派遣社員の分際であれこれ言うなんておこがましいと思っていたけど、真山さんがそう言うのなら考えてみたい。
「それじゃ、連絡するよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
体は冷え切ってしまったけど、心はワクワクしていた。