上司に秘密を握られちゃいました。
派遣の立場
「おはよ」
次の日。
出勤して更衣室に行くと、美晴が着替えていた。
「藍華、おはよ。どう、福袋、忙しい?」
「うんうん。ちょっと残業しちゃった。でもね……」
「えーっ!」
真山さんと食事に行ったことを話すと、美晴は一瞬動きを止め、目を見開いている。
「えー、いいなぁ。クリスマスは終わっちゃったけど、藍華に春が来た」
「いや、そういう訳じゃないよ。たまたま手伝ってくれただけ」
美晴の言うように『春』なら最高だけど、残念ながらそうではない。
「バカね。その“たまたま”が運命だったりするわけだよ。
私には一切ないわ。仕事ばっかり」
美晴は大きな溜息をつく。
おせち売り場は駆け込み需要で、ここ数日、大変なことになっていたらしい。
予約は締めきっているものの、それを知らない客が押し寄せ、頭を下げて断りっぱなしだったとか。