上司に秘密を握られちゃいました。

「僕がやる」

「えっ?」

「他の社員ができないなら、俺がひとりでも」


真山さんの言葉に心が揺れる。
この人は、心から東郷を愛している。


「お正月といえば……」


たまらず口を開いた。
真山さんがそこまで言うのなら、一緒に頑張れば済むことだ。


「松竹梅、それに南天……」

「うん」

「その造花等を、ワンポイントで飾るというのは……」

「なるほど!」


真山さんの目が光った。


「それひとつで、正月気分になれるかもしれないね。造花が手に入るか確認してみる」

「あっ、でも……コストが」


造花がいくらかかるのか知らない。
せっかく売れているのに、利益を大幅に圧迫したら、大失敗だ。


「いや。他の百貨店にはないことをしたい。
手間もコストもかかっても、お客様が東郷で買いたいと思っていただければ、大成功だ」


真山さんは、私の心配を払拭してくれた。
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