上司に秘密を握られちゃいました。

各フロアで締めの挨拶が終わると、帰宅の途に就いた。

明日も営業するのだ。
正月気分に浸っている場合ではない。


「美晴、お疲れ」


最後まで残っていた美晴と久々に顔を合わせて、労をねぎらう。


「思った以上に大変だったわ」


おせち売り場は当初の予想を超え、全体の売り上げは、前年より十五パーセントも伸びたのだとか。

真山さん考案のデザート重も、売り上げをけん引したようだ。


「私もさすがに疲れた。でも、楽しかったよ」

「藍華は、本当にこの仕事に向いてるね」


美晴の言うとおり、文具メーカーに勤めていたころよりずっと大変だけど、ワクワクしながら仕事ができている。


「明日は、受付嬢は振袖だね」

「うん」


デパートの正月は、受付が振袖を着て客を迎えると決まっている。
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