上司に秘密を握られちゃいました。

「西里さん、ワゴン押さえて!」


本当に戦いだった。
すさまじい人数の客が一気に押し寄せ、ワゴンのストッパーなんて、もはや少しも役に立たない。


「お客様、危ないですから押さないでください」


社員が叫んでいるものの、誰も聞いてはいない。

どこからか聞こえてくる子供の泣き声。
福袋の取り合いも勃発している。


「袋を開けないでください。レジはこちらです」


ハッピを着た社員がメガホン片手に叫んでも、熱いバトルは収まらない。
それどころか、ドンドン客が増えて、満員電車の様だった。


「ここあとひとつしかないわ。西里さん、バックヤードにまだある?」

「はい。持って来ます」


まさに走り回るという言葉がぴったりだった。
艶やかな着物に身を包み、にこやかに微笑む受付嬢とは、対照的な仕事だ。
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