平安絵巻
ある日の事。
『そう言えばね、兄上様が側室を決めるら しいの!』
『そうなのですか?』
『どうしても、兄上様にはお子が出来ない からと。』
正室である、六条の君は帝と夫婦となり10年がたっていた。
『幼すぎたのよ。12で婚約など…。』
今、帝は22歳。
まだ、若い。
『これで、今日は終わり?』
『はい。そうです。』
『あ、そうだった。今日、兄上様がおいで よ!!』
『な、なぜ?』
『私が勉強しているのを見たいと。
勉強していないと思われているのかし ら?』
ふふふと松の君は笑う。
『鶴宮殿!あなたは、女でしょ?』
『え!? ち、違います!』
『じゃあ、なんで、そんな髪が長いの?』
手が震えている。
松の君は続けた。
『実は、兄上様のはからいであなたがいけ ているところを見させてもらったの。』
見破るとは…
『あなたの、所作は女性の所作。
ほかの方には分からなかったかもしれな いけど私にはわかった!』
『でも…』
『いや、もう一人見破った方がいたわ!
帝よ!!』
『あとで、言っておられたわ!
まさか、あの場に女人がいるとは…と』
『私は、どういう処分にされるのです か?』
顔が強張った。
『何をいうの!
あなたには同じように勉学と生け花を教 えてもらうわ!』
『それ、だけですか?』
『それだけよ!!
あ!兄上様のおなりよ!』
『兄上様、今日もご機嫌麗しゅうございま す。』
初めて、帝を間近でみた。
見とれてしまっていた。
背が高く、優しそうな顔立ちだった。