平安絵巻
雅博様が、近づいてくる。
必死に顔を隠す。
『中宮様ですか?』
『はい…』
『これを、お届けに参りました。』
『そうですか…』
『では、これにて。』
『雅博様!!私を覚えてはいらっしゃいませ んか?』
『あなたは…、左大臣様の…』
『鶴です。』
『中宮になられたのですか。』
『はい…』
『だから、取りやめになられたのですか?
私との』
『いいえ、決してそのようなことは。』
『とにかく、中宮様がお幸せになれば何も
申すことはありません。』
雅博様は、去って行った。
雅博が持ってきたのは、手紙だった。
『帝から…』
『早くそなたに会いたいものです。
明日、食事を共に致しましょう。』
嬉しいけれど、どこか突き刺さる。
本当に会いたいなど、思っていらっしゃるのか……。
帝には、少なくとも1ヶ月は会っていない。
雪の君に、想いが変わられたとしても不思議ではない。