だめだ、これが恋というのなら
次の日。
俺はいつも通り、浩二と一緒に大学へ向かう。
その途中、電車の中で、アイツを見つけた。
横顔からではよく見えなかったけど、なんとなく憂いの帯びた顔をしていた。
もしかして、昨日のことが原因でなんか嫌がらせとか受けた…?
俺はアイツの顔を見て、なんとなくそんなことが思い浮かんだ。
『あれ、芽衣じゃん』
浩二はそう言うなり、彼女の方へと車内を移動し始めた。
『芽ー衣!』
浩二がそう呼びかけると彼女は振り返った。
『昨日は突然ごめんなさい』
彼女は浩二に深々と頭を下げて、そう謝罪した。
『いいって、昨日はみんなも酔ってたし、それに芽衣ってあういうのゲームでも嫌なんだろう?』
浩二がそう尋ねると、アイツは俯いて、
『うん』
と、答えた。
『やっぱなー、なんか分かってたのに辞めなくてごめんなー』
浩二の言葉に、彼女は首を何度も横に振った。
『司があの時、あーしてなかったら、多分芽衣にもっと嫌な思いをさせてたかも』
浩二の言葉にアイツは顔をあげる。
『…え…?』
『アイツさ、多分芽衣が遊び半分でもキスとかするの嫌なことに気付いて、だけど普通に止めただけじゃ場がしらけるし、それにそのままキスしてたら、みんなも酔ってたからそのまま付き合っちゃえとか散々なことを言ってたと思うし…』
浩二の言葉に鼻で笑う。
俺、そんな周りのこと、考えてる奴じゃない…
アイツの気持ちなんて。
アイツがどう言われようと俺には関係ない…
『でも司なら、昨日みたいに“したかったから”とか適当に言って、誤魔化せるじゃん?』
浩二の言葉に彼女は怪訝そうな顔をする。
『でも、彼にはそれが当たり前のこと、でしょう?』
俺は彼女の言葉にもう一度、鼻で笑った。
そして、ゆっくり、浩二とアイツの元に歩み寄る。
『そうだよ?俺はそういう最低な人間だから』
俺は笑いながら、彼女にそう伝える。
そうだよ、俺はそういう人間だから。