だめだ、これが恋というのなら
『なぁ、司?
俺のバイト先の先輩からここのチケットもらったんだ』
俺に四枚のチケットをみせびらかす浩二。
浩二の手によって揺れているチケットをよく見ると、夢の国のチケット。
『みんなで行かね?』
『みんなって誰だよ』
浩二はそう言って、俺の手元にチケットを差し出す。
『俺と司、野郎で行くのも気が引けるしな…
女は麻里、それから…芽衣でいいんじゃね?』
『浩二、お前、俺が“このままでいい”って言ってんだから』
『じゃ、なんで朝追いかけた?』
俺の言葉に浩二は自分の言葉を被せた。
『本当はこのままにするのはいやだ、そう思ったからじゃねぇの?』
浩二の真剣な、その目に耐え切れず、俺は視線を反らした。
『俺を見ろ、そう言ってたよな、それはなんで?』
浩二の続く、その質問に俺は溜息を吐く。
『別に深い意味なんかねぇよ』
深い意味なんてない。
ただ、俺のこと見ないのに、
俺のことを追いかけたりもしないくせに、
“最低”とか“だいっきらい”とか言われたくなかった。
ただ、それだけのこと。
『お前さ、分かんないの?』
『…なんだよ、浩二まで』
なんで浩二までそんなこと、言うんだよ…
アイツも“分からないの”って聞いてきた。
なんなんだよ…
『お前、自分が発する言葉の意味くらい、自分で把握しておけよ』
浩二はそう言うなり、講義中にも関わらず、講義室を出て行った。