だめだ、これが恋というのなら


今日は休日。

どのアトラクションも家族連れやカップルでいっぱいだった。


多分、周りから見れば俺と麻里は普通にカップルって思われてて。

きっと浩二とアイツも普通にカップルだと思われる。



『芽衣たち、なんかアトラクション乗れたかな?』


俺たちは他愛ない話を続けながら、俺が乗りたいと希望したアトラクションに順番待ちをしていた。


『今日はどこも待つだろうからな』


アイツはどんなアトラクションを好むんだろう。

どんな話をして、どんな風に待つんだろ…


今、浩二と何を話してるんだ?





『司ー』


不意に麻里の顔が近づく。


『あ、何?』



『もう全然話を聞いてないんだから。
 芽衣たちのことでも気になんの?』


『いや、別に、昨日イラつくことあって眠れなかったから』


『イラつくことって?』


麻里が問いかける。


『まぁ…いろいろあるだろ』


俺はそう言って、進み始めた列に遅れないように進む。


『もー』

麻里は口を尖らせ、俺の腕を引く。



『待って、司』

麻里は両手で俺の腕を掴む。



麻里はアイツに比べて可愛いよ。

麻里はアイツに比べて素直に気持ちをぶつけてくるし、わかりやすい…



アイツはそうじゃない。

“最低”と言って、“だいっきらい”と言って、俺に笑ったくせに、なのに缶コーヒーなんか買ってくる。



アイツの気持ちが分からない。


アイツが何故俺に振り返らないのか、なんで俺を追いかけないのか、どうして俺を見ないのか、そんな理由よりも…


お前の気持ちが知りたい。


本当に俺のこと、嫌いなの?



“嫌われてたら、こんなこと誰もしないだろ”


ふと脳裏に過ぎる浩二の言葉。


なぁ、お前は俺のことが好きなの?





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