だめだ、これが恋というのなら
それどころか、
『じゃ、司、ファンシーランドには行かないで
今からホテル行こうよ?』
麻里はそう言った。
『…何、言ってんの?』
俺は笑いながら麻里を見る。
『麻里さ、何真剣な顔をして言い出すのかと思えば、自分の言ってる意味、分かってんの?』
『分かってる、だから言ったの』
麻里の変わらない、その真剣な眼差しが、痛いほど俺を見つめる。
『麻里、俺と麻里は友達でしょ?
俺、そういう奴に頼らなきゃいけないほど、女に困ってないよ?』
それでも俺は麻里のその真剣な目に気づいてない振りをする。
『知ってる、だって司はみんなの司だもん。
だから司が誰とキスしようとセックスしようと関係なかった。
でも…』
『…でも?』
『特定の人物を想うのだけは、それはあたしたちへの裏切りだよ』
…裏切り?
『司をどんなに想ってもいい、どんなに好きになってもいい。
けど司の特別な女にはならない、それがあたしたちのルールなんだよ』
『でも、司はそれを裏切る』
『麻里、俺にはその裏切るの意味が分からねぇよ』
『嘘、司は知ってる』
麻里の視線は今まで以上の真剣な目だった。
いや、というよりも本気すぎて怖いくらいだった。
『だって、司の中に芽衣がいるでしょ?』
麻里からアイツの名前が出る。
『…なに…言ってんの?』
俺は突然のアイツの名前に動揺を隠せなかった。
『司、心の中に芽衣がいないっていうなら、それを証明してよ』
心の中に、アイツがいるはずがない。
あんな奴、浩二と今頃楽しく笑い合って……
…俺
なんで、そんなこと、考えてんの…?