だめだ、これが恋というのなら
夢の国なのに side芽衣
『芽衣?』
隣を歩く、浩二くんが私の名前を呼ぶ。
『何?』
私がそう返事をすると、浩二くんは私の顔を覗き込む。
『司のこと、心配?』
浩二くんは私の心を見透かしてるのか、そう言った。
『…どうして?』
私が問いかけると、浩二くんはその場に立ち止まり、そして口を開く。
『麻里が司の腕に絡ませたとき、泣きそうな顔をしてたから』
どうして、この人はよく見てるんだろう。
あの想いは封印したし、今日はとことんあの男を嫌いになってやろうって思ってきたのに。
でも、あんな些細なことで、私、泣きそうになった。
『そ、そんなことないよ、浩二くんの勘違いじゃない?』
私はどうしても誤魔化したくて、そう笑いながら言った。
でも、一瞬の誤魔化しなんて意味がない。
きっと、この人は私の気持ちを見透かしているに違いない。
『それに、あういう光景はいつも見てるし、なんとも思わないよ』
そうだ。
あんな光景はいつものこと。
あの男が、大学に入学して、何人の女とあんな風に腕を組んだか…
『嘘、本当は司のこと、好きでしょ?』
『…正解、でしょ?』
浩二くんの言葉にもう私は誤魔化しの言葉が見つからない。
だって、意味ないもの。
この人は本当に私の気持ちを見透かしてる。
私にはこの人を論破できる、そんな言葉が見つからない…