だめだ、これが恋というのなら
『ね、今日、司の部屋に遊びに行ってもいい?
この間遊びにきてもいいよって言ってくれてたでしょ?』
女って、そういう記憶力のよさ、半端ないよな…。
俺なんていつも適当に、その時の気分で話してるだけなのに、女っていつもこういう言葉だけはしっかり覚えてんの。
その時の流れで言ったようなものなのにな、忘れてくれれば、というよりも受け流してくれて良かったのに。
『あ~別の学部の奴も来るみたいだけど、それでいいんならね?』
まぁ、他の奴らもいれば雪奈も何も出来ないだろうし。
てか、今日はマジでかったるい…
この間はイライラしてるのもあって雪奈とヤったけど、雪奈としようとももう思えない。
『楽しみにしてるね』
あ~あ…
こういう笑顔もウザイ、こういう言葉もウザイ…
今日は飲みに行くかな。
俺は取り巻きの女たちとの約束をすっぽかす気満々だった。
でも、女たちの前では面倒くさいことになるし、何も言わず、その女たちと講義室まで移動した。
講義室に着くと、さっきの女は一人座席取りをしていたみたいで、俺と一緒に来た女たちの席を取っていた。
…馬鹿な女。
こんなこと、こんな女たちのためにする必要ないのに。
俺はそう思いながら、彼女の席の前に荷物を置く。
『司、今日ここに座るの?
え、じゃ、私その後ろがいい!!』
他のグループの女達も寄ってきて、俺の前後左右の席の争奪戦が始まった。
本当にウザイ。
『俺、一番端に座るし、左隣は浩二が座るみたいだから』
俺がそう言うと、女たちの視線が浩二に向けられる。
“お前どけよ”、どんなに俺の前では可愛い振りをしても、甘ったるしい声をだしても、心の中の声がしっかり聞こえる。
こういう女はマジでウザイ、近寄らないでいただきたい。
『あ、先生きたよ』
俺が言ったと同時にだるそうに歩く教授が入ってきた。
そして、俺は当たり前のように彼女の前に腰掛けた。
『つまんな~い~!!』
女たちはそんなことを口々に言っていたけど、どうでもよかった。
『はいはい、授業ね』
教授の言葉で講義が始まった。