だめだ、これが恋というのなら
『司、立って…』
俺は麻里に支えられ、その場に立つ。
二人の手は繋がったままで、二人は何かを話してる。
『ほら…』
麻里は気丈にも俺の腕を引き、アイツらに近づく。
あともう少しというところで、麻里は立ち止まり、振り返って、
『大丈夫だよ、司…
もし司の気持ちが届かなかったら、あたしが控えてるから…』
…そう言ってくれた。
俺の気持ちを知りながら。
俺の気持ちを分かっていながら。
それでも、麻里はそう言った。
まるで、あんたもこんな風に言ってみなさいと言わんばかりに。
『行っておいで』
麻里はそう言って、俺の背中を押した。
その拍子で、手を取り合っている浩二とアイツの前に現れる形となり、俺に気付いた浩二が振り返り、その浩二の視線を辿ったアイツの視線が向けられた。
驚きに変わる二人の顔…。
『…何、やってんの?』
二人の視線に、二人の状況に、俺はそう尋ねた。
『…司…』
浩二はそう言って、アイツの手から自分の手を離した。
『浩二…そいつのこと、好きなのか…?』
俺は浩二のその行動に、そのうろたえた目に、そう問いかける。
『司、俺は…』
『好きなのかって聞いてんだよ!?』
俺は浩二の言葉に自分の問いかけを被せ、話の核心に迫った。
俺、浩二と女の取り合いとか…そういうの勘弁してほしいよ…
でも浩二は何も答えなかった。
『…そうなのか…?』
俺の再度の問いかけに浩二は顔を上げ、首を縦に振った。
『…そっか』
そっか…
じゃ、さっきのは、さっきの二人のあの絵は、浩二の想いが叶った、そういうことか。
『司、でもな俺』
『浩二、ごめん…』
俺は浩二から離された、その小さな手を引いた。
『…ごめん、でも、浩二には渡せない…』
浩二の顔を見つめ、俺はそう静かに浩二に告げた。
『司…?』
『浩二、絶交してくれていい……
だから、こいつのことは諦めて』
俺はそれだけ言って、彼女の手を引いて走り出す。