だめだ、これが恋というのなら
ねぇ…約束するよ?
私たちは年齢的にはもう大人。
選挙にだって行けるし、お酒だって飲める。
でも、大人だって泣きたいとき、あるよね?
すごく不安で、不安に押しつぶされそうな、そんな時だってあるよね?
だから、私、司に約束する。
司が泣きたい時は、私が司の涙を拭き取るね。
司が不安に押しつぶされそうになったら、私が司の盾になる。
司が何かにつまずいて歩けなくなったら、私が司の障害物を剣でやっつけるよ。
だから、私、司の傍にいてもいいですか…?
『母さん、俺、恋をしようと思う』
私の横で、彼は静かにお母さんに話しかける。
ふと目を開けて、彼の方を見ると、彼はとても優しい表情をしていた。
『俺の隣にいる人、俺、この子と恋をしようと思ってる』
『立花 芽衣さん、っていうんだ』
『もしかしたら母さんの言う通り、俺は恋することを望まない方がいいのかもしれない。
その方が芽衣を傷つけなくて済むかもしれない…』
『けど…俺、芽衣のことが好きなんだ、芽衣のこと傷つけない、俺が全力で守る、だから、俺も芽衣と恋してもいいよな、母さん?』
彼の言葉が胸に響き渡る。
こんなに。
こんなに、彼の中に私がいるなら。
私の中にも、彼に負けないくらい、いやそれ以上に彼がいるんだから、だから私たちは大丈夫。
そう、確信できた。
『母さん、俺、芽衣を幸せにするよ』
『芽衣』
ひと呼吸あって、彼は私の名前を呼んだ。
『ずっと、一緒にいよ』
彼は今までより一番真剣な目で、真剣な顔で、そう言った。
『…うん』
彼は私の返事を聞いて、ジーンズのポケットから小さな箱を取り出した。
『あけて?』
彼はその小さな箱を私に差し出す。
私は“いい?”と確認し、彼が首を縦に振ったのを確認してから、その小さな箱を開ける。
そこにはダイヤモンドがまばゆくほどに輝く、シルバーリングがあった。
『……これ…?』
『俺、考えたんだ、どうしたら芽衣を不安にさせないか。
どうしたら芽衣を幸せにできるか、そしたらこれしか思い浮かばなかった』
彼の言葉に、また涙が溢れ出した。