だめだ、これが恋というのなら
俺は携帯を開く。
連絡の相手は浩二。
なんかあの女が近くにいると、他の女との違いが見えてきて、なんでアイツは俺を追いかけないのか、とか色々考えてしまう。
なんで。
どうして。
なんでもない、ただの女。
でも、追いかけてもらえないのが嫌なのか、俺という人間を透明人間のように扱う、その態度が気に食わないのか。
……だめだ。
なんか考えてしまう。
『もしもし、浩二、今どこ?』
呼び出し音が切れ、浩二が出るとすぐに、俺は浩二の居場所を確認した。
自分から浩二を置いて、講義室を出たのに。
『あ、司?お前こそどこよ?』
『俺は…』
そう言って立ち止まる俺。
電話番号を探してる間、歩く速さがゆっくりになって、そこで追いつかれたんだろう。
目の前には、さっきの見知らぬ男と肩を並べて歩く、アイツの姿。
『司?』
電話越しで聞こえる浩二の声。
でも、俺の目は見知らぬ男とアイツの姿に釘付け状態になってる。
『おーい、司?』
なぁ、浩二。
なんで、あの女は見知らぬ男にはあんな風に笑うのに。
同じ学部、同じ学科、しかも同じ部屋で同じ講義を受けている俺にはあんな顔を嘘でも見せないんだろう。
『……もう卒業だけど…』
もう、卒業したら、この学校を卒業したら、二度と会わない。
会わなくなったら、考えなくなんだよな?
だって、俺の生活にアイツはいないから。
『卒業?お前、何言ってんの?』
浩二の声が響き、俺は咄嗟に“なんでもない”、そう浩二に返事をする。
『そんで司は今どこ?』
浩二に聞かれ、講義室を出て少し歩いたとこと伝えると、浩二は電話を切り、講義室から出てきた。
しかも、取り巻きの女たちも一緒に。
『司、このまま合流してもいいでしょ?』
そう麻里に言われ、俺はげんなりだったけど、とりあえず苦笑いでその場を誤魔化した。