だめだ、これが恋というのなら
それからその取り巻きの女たちは図々しくも俺のアパートにまで押しかけてきた。
俺の部屋を見るなり、“おしゃれ~”とか“男の部屋にしては片付いてるね”とか言いたい放題の感想を述べる。
正直、本当に帰っていただきたい。
でも、こうやって騒がしくしてた方が余計なことを考えずに済んでいいのかも。
…なんて。
そんなほんの少しの束の間。
みんな酒が入り始め、どんちゃん騒ぎになりつつある頃、家のインターホンが鳴った。
時間的には雪奈っぽい気がする。
居留守を使いたい、だがしかしどんちゃん騒ぎでは誤魔化しようがない。
『…は~い』
仕方なく玄関のドアを開けると、そこには携帯片手に、あの女が立っていた。
『…え…?』
俺は思わず、心の声が言葉となって出てしまった。
てか、なんで、いんの…?
『…あ…えっと…』
彼女も状況が掴めていないのか、瞳が右往左往している。
『あ、芽ー衣ー!!』
客人に気付いたのか、ほろ酔いの麻里が玄関に顔を出す。
『麻里ちゃん、あの…麻里ちゃんのお家で飲むんじゃ……』
『え、司の家だよ、ここ』
そう言って麻里はにこやかに微笑んだ。
でも麻里の言葉に目の前の彼女はとても困った顔をしていた。
『無理してこられても酒がまずくなるし、麻里、飲みたい奴だけで楽しくやろう』
俺はみかねて麻里に話すも麻里は口を尖らせ、半ば強引に彼女の手を引いて、部屋に通した。
強引にとはいえど、彼女が俺の部屋にいる。
今までまともに話せなかった彼女が、俺の部屋にいる。
その不思議な光景に、俺はただ呆然と眺めているだけしか出来なかった。
『ちかさー酒ないー』
浩二もほろ酔いになってきたのだろう、段々と呂律がおかしくなってきてる。
いつもだったらもっと飲めるはずなんだけど。
俺はキッチンに置かれた一人暮らしには少し大きめの冷蔵庫から酒を取り出し、そしてリビングに持っていく。
もう、ほとんどの奴らが酔いが回ってる感じ。
その中で彼女は愛想笑いを浮かべ、酔っ払いに付き合っていた。
俺はそんな彼女の隣に移動する。
みんな酔ってるし、素面の状態は俺と彼女だけ。
俺も少し酔ったふりをすれば、彼女に日頃から抱いてる疑問をぶつけられるかもしれない。
でも、その時だった。
彼女の隣に座ろうとした、まさにその瞬間、インターホンが鳴り響く。
俺が近づいてきたことを察知したのか、彼女は隣の麻里と場所を入れ替わり、俺と隣り合わせにならないようにした。
それは俺の勘違いだろうか。