だめだ、これが恋というのなら
『司だぁ♪』
麻里は隣に来た俺の腕を掴み、頬を俺の腕にすり寄せて甘えてくる。
再びインターホンが鳴り、俺は麻里の腕を離して、玄関へと向かう。
『司ー?』
この声からすると雪奈に間違いない。
俺は玄関のドアを開ける。
そこには予想通りの雪奈がにこやかに立っている。
『お客さん?』
中のどんちゃん騒ぎに雪奈が問いかけてくる。
『あ、まぁ…
同じ学科の奴らと急に飲むことになっちゃってさ』
俺がそう言うと、
『じゃぁ…残念だけど、今日は帰るね?
司とは二人きりがいいから』
語尾には完全にハートマーク…
『なんかごめんなー』
俺が謝ると、雪奈は俺の首に自分の腕を絡ませた。
『今日はおとなしく帰るから、ご褒美にキスして?』
雪奈はそう言って、悪魔のような顔で微笑んだ。
きっと雪奈をいいなと想ってる奴だったら、こんな顔をされて、キスをねだられたら、絶対するんだろうな。
けど、俺は雪奈には興味がない。
『司、いいでしょ?』
雪奈の顔が段々近づいてくる。
面倒くさい…
頭で色々考えるのは。
とりあえず、今日のところはキスさえすれば帰るだろうし。
俺はそのまま雪奈のキスを受け入れた。
甘い甘いシャンプーの香りが雪奈から漂う。
『ありがと、司』
雪奈はそう言って、もう一度可愛らしい笑顔を見せてから帰っていった。
玄関のドアを閉めた瞬間、どっと疲れが出てきた。
『…はぁ…』
思わず溜息が漏れる。
そして、俺はみんなのいるところに戻ろうと…
『……!』
そこには麻里の隣にいたはずのアイツが立っていた。
俯いていて、どんな顔をしてるのかは分からないけど。
『覗き見?』
俺がそう言葉をかけるも無視。
『そういうのが趣味なんだ』
そう言葉をかけても無視。
『どうでもいいけど、そういう趣味は男ウケ悪いからやめときな』
俺がそう言うと、
『………そんな趣味ない……』
そう言いながら、彼女はだらんと垂れていた手を丸め、その握りこぶしに力を入れた。
震えている、その握りこぶしの意味が俺には分からなかったけど。
『あっそ』
俺がそう言うと、彼女は俺よりも先にみんなのいる部屋に移動した。
そして自分の荷物を拾い上げ、コートも着ないで部屋から出ていこうとした。
『あれ、芽衣?
今から王様ゲームするんだから』
麻里はそう言って半ば強引に彼女の手を引いて、無理矢理自分の隣に座らせた。