恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】
「多恵、午後から雨降るみたいだよ。傘持って行きなさい。」
『いらない。じゃあ、いってきます。』
傘を持たせようとするお母さんを無視して、私は家を出る。
徳山 多恵(とくやま たえ)、17歳。
私は午後から雨が降る日が好き。
毎朝かかさず天気予報はチェックするし、午後に雨マークがついてるだけで嬉しくなる。
案の定、午後から雨が降ってきた。
「多恵、またユッキー待ち?」
帰りのHRが終わっても帰ろうとしない私に、聡子(さとこ)が声をかけてきた。