恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】
『だって、幸成が入れてくれるでしょ?』
それが当たり前だと言うように私は答える。
「ハァー。はいはい、わかりましたよ。じゃあ帰るぞ。」
『うん。』
幸成の、決して大きくはない折りたたみ傘を広げ私達は歩きだす。
幸成(ゆきなり)と出会ったのは去年の春だった。
天気予報で雨が降ると聞けばちゃんと傘を持ち歩く私だったけど、たまたまその日は寝坊してしまい天気予報を見る事が出来なかった。
そんな日に限って午後から雨が降り出した。
もちろん傘なんか持ってきてない。