恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】
「多恵?」
幸成と出会った時の事を思い出していると、降りるバス停に着いていた。
『あっ、ごめんごめん。』
慌てて立ち上がり幸成の後に続いてバスを降りる。
「どうした?何ボーっとしてんだよ?」
『幸成と出会った頃を思い出してた。』
「ふーん。」
たいして興味がなさそうな声。
「はい、じゃあ傘貸してあげるよ。」
幸成の家の前に着くと、いつも決まって幸成はこう言う。
『ありがとう。』
幸成の手から私の手へと移る傘。
ちょっぴり照れくさくて、ちょっぴり切ない瞬間。