恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】
翌日は私の心と同じようなどんよりとした曇り空。
昨日の幸成の表情が頭から離れず私の気分も晴れないけど、いつものように傘を返しに行った。
この前返しに来た時と同じ女子が幸成に話しかけていたけど、幸成はたいして話を聞いているわけでもなく上の空。
『幸成。』
私の声に反応してトボトボこちらに歩いてくる。
「多恵…。」
『傘、ありがとう。』
「ああ。」
差し出す傘を受け取るが、幸成はその場から動こうとはしない。
自然と私もたたずむ。