恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】
そこにはあの子が立っていた――
次の瞬間、幸成は1歩足を進めた。
『行かないで!』
口をついて出た私の言葉に、幸成の2歩目を出す足が戸惑う。
『お願い、行かないで。…ずっと、…ずっと幸成の事が好きなの。だから行かないで。』
涙なんか流すつもりはなかったのに。
泣いて懇願する私に、幸成は、
「…ごめん。」
と一言。
そのまま彼女の元に歩いて行き、2人で家の中に消えてしまった。