恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】


その時、


「彩奈、話があるんだ。」


康弘くんの声が聞こえた。


『うん?何?』


私の問いかけに、少しの沈黙の後


「別れてほしい。」


それはあまりにも突然だった。


「本当にごめん。」


頭を下げる彼を見ても理解出来ない。


そして、康弘くんはさらに言葉にした。


「実は…結婚してるんだ。」


この人、何を言ってるの…?


「1ヵ月ぐらい前に子供も産まれた。」


1ヵ月前って私達が付き合い始めた頃…?


「嫁さん、里帰りしててさ。明日帰ってくる。」


だから別れてって…?


夢なんじゃないかと思った。


どうしても信じられなくて、でもこれは現実。
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