恋 歌 -コイ ウタ- 【短編集】


ソファーに座り新聞を広げるよしくんの隣に、私も腰を下ろす。


するとおばちゃんが、


「何処か行くの?」


と聞きながらソファーの前にあるテーブルに麦茶を置いてくれた。


それを聞いたよしくんが、


「そういえば、那波何しに来た?」


と私の顔を見る。


『映画行こうって言ったから…』


ちゃんと約束をしたわけじゃないから、だんだんと語尾が小さくなってしまう私。


「俺行かないって言っただろ。」


案の定、言われてしまった。


何も言えなくなってしまった私を見兼ねて


「たまにはいいじゃない。義隆、行ってきたら?」


おばちゃんが助け舟を出してくれた。
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