ホルガリズム
「近場で美味しい居酒屋があるなら教えて欲しいんだけど。」
ご機嫌ナナメにやってきた彼女は、捲くっていたTシャツの袖を直しながら言った。
前髪を上げているため露になっている額には、じんわりと汗が滲んでいる。
「あー…っと、駅前にあるコンビニから右に曲がって、30メートル先あたりにモグラって店があるから…。」
混乱気味のまま答えたにしては、なかなか上手く説明できたと思う。
「へぇ~モグラねぇ。オススメの料理は?」
「ナスの揚げ出しと玉子焼き。」
行くと必ず注文する、お気に入りのメニューを教えた。すんなりと言葉が出てきてくれたおかげで助かった。
「そっか。それじゃあ行ってみるよ、ありがとう。」
踵を返して階段を降りようとした時、彼女は立ち止まった。
チンプンカンプンのまま玄関を閉じかけていた、僕の腕も止まる。
ゆっくりと哀しげな眼差しを向けて、彼女はこう言った。
「……駅ってどこ?」
ご機嫌ナナメにやってきた彼女は、捲くっていたTシャツの袖を直しながら言った。
前髪を上げているため露になっている額には、じんわりと汗が滲んでいる。
「あー…っと、駅前にあるコンビニから右に曲がって、30メートル先あたりにモグラって店があるから…。」
混乱気味のまま答えたにしては、なかなか上手く説明できたと思う。
「へぇ~モグラねぇ。オススメの料理は?」
「ナスの揚げ出しと玉子焼き。」
行くと必ず注文する、お気に入りのメニューを教えた。すんなりと言葉が出てきてくれたおかげで助かった。
「そっか。それじゃあ行ってみるよ、ありがとう。」
踵を返して階段を降りようとした時、彼女は立ち止まった。
チンプンカンプンのまま玄関を閉じかけていた、僕の腕も止まる。
ゆっくりと哀しげな眼差しを向けて、彼女はこう言った。
「……駅ってどこ?」