ホルガリズム
■第1章
今の季節よりはほんの少しだけ肌寒かったから、おそらく4月のはじめ頃だったのだろう。僕は買ったばかりのカメラを手に1人河原にいた。
正確に言えば1人と1匹。
小柄な体に真っ黒な毛並み、そしてクリクリと大きな瞳が印象的な、まさに猫目な猫をどうにかフィルムに焼きつけようとシャッターを開けたまま追っていたのだ。
夕陽とファインダーが交差して、一瞬だけ目が眩んだ。その隙をついたかのように、猫目な猫は一気に丘を駆け上った。
丘の上から「にゃあ」とも「なあ」とも取れる、猫目な猫の猫なで声が聴こえて僕も丘を上る。
正面の白いベンチの下、黒猫はヒゲ周りだけを白猫にさせて美味しそうにミルクを舐めていた。その傍で、小さな牛乳パックを片手に座り込んでいるパンツスーツの女が、やや顔を傾けるようにして猫の顔を覗き込んでいた。
ほんのりと夕陽を反射させた栗色の髪を、指ですくうように耳にかける彼女を見た時は、なんだか僕の視界のピントが一瞬だけボケたような気がした。
なのに・・・彼女はティッシュで思い切り鼻をかんだのだ。
それはそれはもう豪快に。
正確に言えば1人と1匹。
小柄な体に真っ黒な毛並み、そしてクリクリと大きな瞳が印象的な、まさに猫目な猫をどうにかフィルムに焼きつけようとシャッターを開けたまま追っていたのだ。
夕陽とファインダーが交差して、一瞬だけ目が眩んだ。その隙をついたかのように、猫目な猫は一気に丘を駆け上った。
丘の上から「にゃあ」とも「なあ」とも取れる、猫目な猫の猫なで声が聴こえて僕も丘を上る。
正面の白いベンチの下、黒猫はヒゲ周りだけを白猫にさせて美味しそうにミルクを舐めていた。その傍で、小さな牛乳パックを片手に座り込んでいるパンツスーツの女が、やや顔を傾けるようにして猫の顔を覗き込んでいた。
ほんのりと夕陽を反射させた栗色の髪を、指ですくうように耳にかける彼女を見た時は、なんだか僕の視界のピントが一瞬だけボケたような気がした。
なのに・・・彼女はティッシュで思い切り鼻をかんだのだ。
それはそれはもう豪快に。