人魚姫の願い
 それから、私は王子の隠し部屋に監禁された。いくら寒くても服を着ることは許されず、ただ寝具をまとうのみ。
 
 
 王子は毎晩私を訪ね、その胸に大事そうに抱きしめ、口づけをした。
 
 
 逆らうことはできなかった。真の名を呼ばれれば、私は王子の言いなりになるしかなかった。更には、魔女との契約で声も失っていたのだ。悲鳴を上げることすらできなかった。
 
 
 やがて私はこの身に新しい命を宿した。隠し部屋の中で、私は孤独に耐えながらその子を産み落とした——。
 
 
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