人魚姫の願い
 王子の求婚をのらりくらりとかわして、新月を超えるだけ日々が過ぎた。そんな日の朝、王子が私の部屋を訪れて言った。
 
 
「すごいものが見られるらしいよ! 一緒に見に行かないかい?」
 
 
 人間の言うすごいものという表現に、いささか嫌な印象を抱きながらも、私は断ることはせず、出かける支度をした。身一つで陸に上がった私には、王子が与えてくれたものしかない。王子の趣味で選ばれた衣装を着て、私が待ち合わせ場所に現れると、王子は満面の笑みで迎えた。
 
 
「やっぱり。よく似合う。美しいよ」
 
 
 そして、さりげなく私の手をとる王子のあとを、つかず離れずついて行った。
 
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