人魚姫の願い
王子の力でも、人魚を手に入れるのは難しいようだった。数日待って欲しいと言われ、私は日々太っていく月を恨めしげに見上げていた。
満月まであと二日と迫った日、ようやく王子から吉報がもたらされた。
「明日、人魚を引き渡してもらえることが決まったよ。一緒に迎えに行くかい?」
私は笑顔を作って頷いた。すると、王子は嬉しそうに私を抱きしめた。
「これで僕の妃になってくれるね? エリ」
「ええ。もちろん」
王子が私を呼んだ名は、私の真の名前ではない。海のものは、人間に真の名を呼ばれれば、魂を奪われると聞いている。適当に思いついた偽の名を私は名乗った。
偽の名、偽の姿。人間でもないこんな女をよくも妃にすると決めたものだ。
当然、私は王子の求婚を受けるつもりはない。姉を自由の身にしたら、私もあとを追って海の世界へ戻るつもりだ。
満月まであと二日と迫った日、ようやく王子から吉報がもたらされた。
「明日、人魚を引き渡してもらえることが決まったよ。一緒に迎えに行くかい?」
私は笑顔を作って頷いた。すると、王子は嬉しそうに私を抱きしめた。
「これで僕の妃になってくれるね? エリ」
「ええ。もちろん」
王子が私を呼んだ名は、私の真の名前ではない。海のものは、人間に真の名を呼ばれれば、魂を奪われると聞いている。適当に思いついた偽の名を私は名乗った。
偽の名、偽の姿。人間でもないこんな女をよくも妃にすると決めたものだ。
当然、私は王子の求婚を受けるつもりはない。姉を自由の身にしたら、私もあとを追って海の世界へ戻るつもりだ。