人魚姫の願い
 姉は興行に使われたということで、小さな島にいるらしい。大事な姉を見世物などにされたことに怒りも覚えるが、私は正体を知られるわけにはいかない。黙ってにこにこと王子のあとをついていく。王子は私がただ、人魚という存在を物珍しく思って、自分のものにしたがっているのだと思っている。もちろんそれでいい。私の目的など知られてはならないのだ。
 
 
 立派な船に乗って、王子と共に私は姉を迎えに行った。姉は虫の息で、それでも生きていてくれた。涙が出そうになったが、ぐっとこらえた。そして……。
 
 
 私は船の上で、透明な箱をひっくり返して、姉を海の中に逃がした。
 
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