夏服を収める頃には
青のキャミソールとパンツ姿の淳が
大きく手を振って笑顔で改札を通り、
健の前に走ってきた。

健は重い気分を一旦心の奥にしまうと、
淳が口を開く前に言った。

「淳ちゃんが今何言うか当てるね。

『あれっ、お風呂空焚きして
来ちゃった。

まあ、いいか、キャハ!』でしょ?」

「言わない!そんなこと。

家焼けちゃうでしょ」

「じゃあ、

『近所の犬の散歩コースに毒餌
まいてくるの忘れちゃった。
キャハ!』かな?」

「言わない!」

淳の本気の全面否定の声が駅にいる
他の客達の視線を釘付けにした。

二人はそれに気付くと走って駅を
飛び出した。
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