夏服を収める頃には
「僕、つなげますよ」

「やってくれる?健君、優しいんだ」

亜子が自分の顔の前で両手を合わせると、
部屋のチャイムが鳴った。

一瞬、亜子の表情が険しくなったよう
に見えたが、健はゲーム機の配線に
手を伸ばした。

亜子は居間のドアを閉めて玄関へと
歩いた。

健が配線を繋ぎ終わりコンセントに刺し、
電源を入れると亜子が戻って来た。

「小包来ちゃった。

ちょっと待っててね。

印鑑どこだったかな」

亜子はテーブルの上に荷物を置くと
戸棚の引き出しを次々と開けて印鑑
をようやく探し出すと、再び玄関へと
消えた。

ドアが閉まりそうで閉まらなく、
途中でドアが止まった瞬間だった。


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