夏服を収める頃には
明らかに狼狽した目の亜子がさらに健の唇
を求めたので、健は顔を横に振って拒んだ。

「健君、そんな冷たいことしないで。

亜子は健君の前なら素直な
自分になれるの。

好きなのは健君だけなの。

本当よ、信じて」

健は怒りを押し殺して言った。

「先生、俺は先生の心を埋める存在で
何分の一ですか?

二分の一ですか?三分の一ですか?

高校生をからかうのはそんなに
おもしろいんですか?

俺の次は誰に声をかけるんですか!」

亜子は顔を横に二度降った。

その目には涙が浮かんでいた。
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