夏服を収める頃には
「違うの、これは違うの!

健君、落ち着いて話し合えば
分かると思うの。

亜子は誰も裏切らないし、一番好きな
男の子は健君なの。

だから、聞いて」

健は亜子の手を振りほどくと玄関へ進んだ。

「行かないで、健君。

勘違いをしているのは健君なの。

戻って話を聞いて」

健は自分の唇についている亜子の
口紅を手の甲で拭った。

靴を履く健に亜子は続けた。
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