夏服を収める頃には
「だって、健君が亜子に別れを言うの
は変でしょ。

だって亜子、今まで一度も誰からも
相手からお別れを言われたことなんか
ないのよ。

亜子が彼氏を振ることがあっても、
その逆はなかったの。

だから、そんな残酷なことなんか
しないで。

まだ健君を好きな亜子に
『さよなら』なんて言わないで。

そんなひどいことしないで。

木曜日に会えるならそれでいいでしょ?

健君と別れたら、これから木曜日に
亜子は、誰と過ごせばいいの?

健君、戻ってきて。ね?」

支離滅裂な主張をする亜子は玄関で
跪いて泣いていた。

健は靴をはき終えると亜子を見た。

「青山先生」

「何?」
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