夏服を収める頃には
淳は大粒の涙をこぼしながら立ち上がると、
クラスメートに何度も何度も頭を下げた。

斉藤も泣きながら健の方を見ると、目が
合ったので健に言った。

「広瀬、この青葉に来てくれてありがとう。

そして俺のクラスに来てくれて本当に
ありがとう」

健はまた軽く頭を下げるとさらに大きな
拍手が起きた。

淳も泣きながら健に拍手を送り、健に
注目が集まり何かを言わなければならない
雰囲気になったので健は渋々立ち上がった。

「あのう・・・僕のコントに協力して
いただきありがとうございました。

そして転校生なのにあんな偉そうなこと
を言ってすいませんでした。

転校初日は本当に嫌でたまりませんで
したが、みんなのおかげで楽しい高校
生活を送ることが出来ています。

みんなありがとうございます。

あとここで悲しいお知らせがあります。
竹内君が今日をもって転校すること
になりました。

みんな竹内君にお別れの挨拶をしましょう。

せーの!」

他の生徒達は笑顔で一斉に叫んだ。

「竹内君、さようならー!」

「違う!俺、転校しなーい!

健、てめえ、ふざけるな!」

竹内の必死の形相にクラス全員が笑った。
淳も笑いながら涙を拭き健を見つめた。

淳の中で健がさらに大きな存在となった
瞬間だった。
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