夏服を収める頃には
エスカレーターを上りきると
強大な音のテクノが耳に
飛び込んできた。

竹内が左手を上げた。

「俺、興味ないから上のフロアに
行ってっからさ」

「うん。見終わったら電話する」

健は竹内に敬礼をすると
視聴コーナーに走り出した。

五時までに家に帰って夕食の支度を
しなければならないが、まだ時間は
あるので健はヘッドフォンをすると
視聴コーナーのCDプレーヤーの
音量を最大にしてスイッチを押した。

聞いているのは大好きなバンドの
イギリスのギターバンドの
『コワルスキー』で、
そのジャケットはメンバー四人の
写真であった。

そのジャケットを健は凝視した。
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