夏服を収める頃には
「よし、今日はみんなに新しい生徒を
紹介する。おう、入れ」

廊下に立っていた健の心臓は初めて
外科手術を担当した新人医師がやっぱり
しくじった手術室内部のように激しく
騒々しいことになっていた。

硬直したままの表情で健は教室の中
に入った。

生徒達の視線がストーカー規正法に
ひっかかる直前の元夫のように熱かった。

斉藤の横に立ち健は頭を下げた。

「広瀬健と言います。
隣の県立ひばりが丘高校から来ました。
宜しくお願いします」

教室がざわついた。

「おう、お前ら広瀬が挨拶してんだよ。
てめえらも挨拶しねえか、この野郎」

「宜しくな」
「こちらこそ、宜しくね」

斉藤の言葉は荒っぽかったが、生徒達
は慣れているらしく口々に健に対して
返事を返していった。

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