夏服を収める頃には
竹内は泣き真似をして、
健はそれを見て軽く笑っていたが、
亜子の見た目に似合わぬ厳しさに
少し驚いていた。

そして、淳もまた亜子の言動に
少々驚いていた。

四月から赴任してきた亜子は今まで
生徒達の前で、生徒の具体的な
点数について話したことが
なかったからである。

確かに先週のテストは難しいもので
あったが、それならばクラス全員を
注意するべきではないだろうかと
淳は考えていた。

竹内一人を生徒達の前で糾弾する
やりかたに淳は疑問を覚えたが
一瞬振り返った時に見えた健の
笑顔で、そんな考えも
消えてしまった。
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