夏服を収める頃には
二人は笑いながら通路に出た。

亜子は健の横に並ぶと声を潜めた。

「今から話すことはみんなに内緒ね。

分かった?」

「はい、なんですか?」

「私は高校卒業してから全く彼氏の
いない悲惨な生活をしてんの。

最近は自分の性別が女の子なのかさえ
忘れてきてるわけ。

無残でしょ」

「何言ってるんですか。

先生は我が校男子が選ぶベスト
アイドルですよ。

まあ竹内は先生を選ばない
でしょうけど」

亜子は笑ってから

「そうだ、広瀬君、いい?

今から、私達恋人ごっこしない?

ね、やろう!

決ーまり!」

亜子は左右を確認すると健と手を
つないだ。

「うわあ、先生まずいですって」

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