夏服を収める頃には
「五時までに家に帰って夕食を
作らないと
ならないんですけど・・・」

「じゃあ、それまでは大丈夫なんだ」

「はあ・・・あのう、
どこ行くんですか?」

「見て、かわいい」

下のフロアのショップに展示
されている白いブラウスを亜子は
指差してから、健の耳元で
囁いた。

甘いコロンの香りが
健を包んだ。

「部屋に来て」

「えっ?」

動揺する健を無視して亜子は手を
繋いだまま駅ビルを出るとタクシー
乗り場へ進んだ。

「タクシーに乗ろう。

ほら、学校の他の人に見られたら
勘違いされるでしょ。ね」

「はあ・・・」

二人は停車していたタクシーに乗ると
亜子は自宅マンションの住所を告げた。
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