夏服を収める頃には
尾 行
淳の数メートル先で亜子が健の耳元で
囁いているのを見ると、淳は亜子に
激しい憎しみの感情が湧いてきた。

健の表情は明らかに動揺している
ように見えた。

(嫌がる人に無理やり手を繋ぎ、
そして耳元に口を近づけるなんて
最低な大人だ!)

亜子への激しい怒りと悲しみで
いつしか淳の目に涙が
浮かんできた。

本当ならば自分が健の横に立って
いなければならないとも思った淳は
大粒の涙がこぼれるのを抑える
ことが出来なかった。

二人が手を繋いだままタクシーに
乗るのが確認出来た。

(どこに行くんだろうか?

もしかして・・・)
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