夏服を収める頃には
運転手は興味津々で尋ねてきた。

黙っていたら質問が続きそうなので

「私の弟が家のお金を持ち出しして
女と家出したんです。

それがさっきようやく
見つけたんです。

それが、あの車に乗ってんの!

もう話しかけないで下さい!」

「はいはい」

健と亜子の乗ったタクシーは
三十分後あるマンションの前で
停車した。

「追い越して少ししてから
止めてください」

「はいはい」

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