夏服を収める頃には
いつの間にか苗字ではなく名前で
亜子から呼ばれていたが
そんなことも気付かずに健は床に
視線を逸らして答えた。

「まさか、何を言ってるんですか
先生。

世界的同時株安が進んでいるのに
不謹慎な目つきをする高校生が
この世にいるわけがないじゃない
ですか」

(こんなにスタイルがいい女の人とは
知らなかった)

健は目のやり場に困って床を見たまま
じっとしていた。

亜子は赤面する健の姿を見て
うれしかった。

(健君はこの瞬間から亜子を
教師ではなく、
女として意識してしまったんだ。

まあ、初日はこんなもんかな)

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