夏服を収める頃には
「広瀬君、じっと見ないで。

恥ずかしい・・・」

「いやあ、よくそんな格好で
ここまで来たなあって思って。

これからチョモランマを目指すのに」

「何それ。

時々広瀬君って変なこと言うでしょ」

「照れ隠しと自己矛盾の
裏返しですよ、お嬢さん」

「まただ。

会話にならない」

怒って頬を膨らます淳の姿が
健の心を打った。

(なんてかわいいんだ、この人は。

俺、この子と付き合いたい。

俺、小田島淳が好きだ。

そうだ、俺この人好きだ)

健の心の中で何かが弾けた。

胸が一気に締め付けられるような
感覚に健はなった。



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