夏服を収める頃には
二人はお互いの好きなバンドについて
話しながら、地下鉄に乗り換えた。

車内でも音楽についてノンストップで
話しが進んだ。

二つ目の駅で降りて
隣のビルの七階にある水族館に着くと
健よりも淳の方がはしゃいでいた。

場所がそうさせたのではなく、
健と一緒にいることが
淳の心を躍らせたのであった。

「うわあ、すごい。

あれ見て。かわいい」

健は館内を淳と手を繋いで
歩きたかったがまだそんな関係では
なかったので出来なかった。

水族館に全く興味はなかったが健は
淳が振り向いた時だけ笑顔になり、
なんとか一時間が過ぎて
館内を後にした。

昼食はホテルの地下レストランで
ランチバイキングとなった。

「広瀬君はやっぱりたくさん食べる
でしょ、男の子だから」

という淳の理由で選ばれたのだ。

レストランで周囲の女性客を
見回して健は思った。
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