夏服を収める頃には
「まあまあ落ち着いてお嬢さん。

旅は始まったばかりじゃないですか。

あんまりプリプリしていると
かわいいお洋服が返り血で
べっとりする事態になるかも
しれませんよ」

淳は真顔で健に質問した。

「それ、どういう意味よ」

「知らん」

竹内ならここで盛大にこけてくれた
かもしれないが
淳はただ健を腕組みして睨みつける
だけだった。

電車が来ると二人は乗り込み、
座席が開いていたので座り
窓の外の景色を眺めた。

淳は昨日家に帰ってから大野に電話
をして詫びた。

本当なら今日は大野と一緒に
バイキングを食べる約束だった
からだ。

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