あやしやあんどん
喫茶 あんどん
人通りの多い道を少し外れて歩くとその店はある。
『喫茶 あんどん』
ここに集まる客は、普通のお客ではない。この喫茶店では、この世の理から少し外れてしまった者たちのために存在している。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
店にはいると店員らしき青年が客に尋ねる。客は右手で1を表すと空いている席に勝手に座り込む。
店員は特に不思議に思わない。こういう客は珍しくはない。
全身真っ黒で影みたいな客は、今来た者だけじゃない。店内を見渡せば、所々にその影たちは座っている。
「鮫島くん。お願い」
店の奥で料理を作っている店主がたった一人の店員を呼ぶ。鮫島と呼ばれた店員は店主から料理を受け取り、それを運ぶ。
「おまたせしました」
丁寧に運ばれた温かいスープは、とてもいい匂いを店内に放つ。黒い影は何かを確かめながらスプーンを握り、それを食す。
一口、スープを飲み込むと、その影は呻き声を上げた。声にならない何かの叫びが店内に響く。
とても異様な風景だが、鮫島は笑顔でその客を見つめていた。
「気に入っていただけて光栄です」
彼には、その影の言葉が分かるのだろうか。影と会話が成立するように接客をする。
しばらくして、スープを食べ終えたその影は、何かに満足するように頷いた。瞬間、その影から人間の男の老人が笑ったように見えるとその影は消えてしまった。
「またのご来店をお待ちしております」
店員は笑ってそう言った。
『喫茶 あんどん』
ここに集まる客は、普通のお客ではない。この喫茶店では、この世の理から少し外れてしまった者たちのために存在している。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
店にはいると店員らしき青年が客に尋ねる。客は右手で1を表すと空いている席に勝手に座り込む。
店員は特に不思議に思わない。こういう客は珍しくはない。
全身真っ黒で影みたいな客は、今来た者だけじゃない。店内を見渡せば、所々にその影たちは座っている。
「鮫島くん。お願い」
店の奥で料理を作っている店主がたった一人の店員を呼ぶ。鮫島と呼ばれた店員は店主から料理を受け取り、それを運ぶ。
「おまたせしました」
丁寧に運ばれた温かいスープは、とてもいい匂いを店内に放つ。黒い影は何かを確かめながらスプーンを握り、それを食す。
一口、スープを飲み込むと、その影は呻き声を上げた。声にならない何かの叫びが店内に響く。
とても異様な風景だが、鮫島は笑顔でその客を見つめていた。
「気に入っていただけて光栄です」
彼には、その影の言葉が分かるのだろうか。影と会話が成立するように接客をする。
しばらくして、スープを食べ終えたその影は、何かに満足するように頷いた。瞬間、その影から人間の男の老人が笑ったように見えるとその影は消えてしまった。
「またのご来店をお待ちしております」
店員は笑ってそう言った。